ビジネスマッチングコラム vol.61

飛耳長目
建物・建築

M&Aにおける不動産の取扱い

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M&Aにおける不動産の重要性

企業における不動産は、企業価値を構成する重要な資産であり、事業継続性、資産評価、契約関係、法務・税務といった多方面に影響を与える要素です。工場・店舗・オフィスなどの事業用不動産は、事業運営の基盤であるため、その評価や契約内容、法的リスクの把握が不十分であれば、買収後の経営に大きな支障をきたす可能性があります。また、不動産の含み益や減損リスク、賃貸借契約の承継、用途地域などは、買収価格や事業戦略に直結します。したがってM&Aを実行するうえで不動産の取り扱いは極めて重要な検討事項となります。

M&Aのスキーム

①対象会社の法人が土地・建物を所有している場合の考え方、どのように取り扱うか
大きく分けると下記の2通りで行われます。

○株式譲渡で自動的に引き継ぐ
法人格が買手にそっくり引き継がれるため、不動産も自動的に引き継がれます。不動産の売買や登記変更が不要なので、コストを抑えられる点が大きなメリットです。ただし不動産に含まれる含み損益を現在の時価評価に洗い替えを行うことで株価の評価に影響を与えます。貸借対照表には基本的に取得した時の価格が記載されますので条件によってはかなりの変動もあります。また、老朽化リスク、将来の修繕費用などもすべて引き継がれるため、不動産デューデリジェンスが不可欠です。

○事業譲渡で資産を分離して引き継ぐ
事業の一部または全部を分離して譲渡する資産を選択することができます。事業の選択と集中が図れる反面、不動産を譲渡する場合には売手・買手ともに税金が掛かり、不動産売買契約の結び直しや所有権移転などの手続きが発生します。

②対象会社の法人以外が土地もしくは建物を所有する場合の考え方、どのように取り扱うか
株式譲渡を行うにあたり土地と建物を必ずしも法人が所有しているとは限りません。例えば土地が法人以外+建物が法人の所有である場合、下記のような考え方が挙げられます。M&Aの場合では土地や建物を対象会社の社長が個人で所有していることも少なくありません。

○土地は法人以外のまま、建物は法人所有のままで売却
土地の所有は法人以外のままにして、建物を所有する法人の株式を譲渡し、土地所有者と買手の法人との間で賃貸借契約を締結します。この方法が現状維持であり最も一般的な方法になります。知人や近親者が土地の大家で、そのよしみから無償または相場より著しく低廉で貸し借りしている場合、過去の借地権認定課税のリスクを確認する必要があります。M&A後の賃借料は適正な相場価格になるでしょう。

○土地所有者から土地を法人が買収
土地所有者の合意がある前提ですが土地を法人が買収し、土地と建物の所有者がすべて法人の状態で株式譲渡をします。こうすることで土地買収コストは一時的にかかりますが、その後の地代家賃は不要になります。売買価格は売手と買手の話し合いになりますが、話し合いをスムーズにするためにも不動産鑑定士などに相談するのが望ましいでしょう。また対象会社に土地買収資金がない場合は買手法人が直接買取りするかあるいは買手から対象会社へ買収資金を貸付けることもあります。

M&Aにおいては売手と買手の交渉の末、どのようなスキームにするかが決められます。売手・買手以外の第三者の他人が不動産のオーナーの場合、そのオーナーとも話し合いをする必要が出してくるかもしれません。どの方法を選択するかは所有者次第にもなってくるのでしっかりと相談をしましょう。

不動産を賃貸として扱う場合の金額はどのように決めるか

不動産を賃貸として扱う場合は「第三者間価格」となります。売手・買手の双方で関係性を維持するのに適切です。以下の計算を元に算出されています。

○土地の場合
事業用の借地料の相場は更地価格の4~5%になり、下記の方法から相場が算出されます。
・公租公課法(簡便法)
借地料=「固定資産税+都市計画税」の5~8倍
・路線価法
借地料=更地価格(路線価〈1平方メートル÷0.8×面積〉)×1.5〜3%
・積算法(より理論的な方法)
借地料=「更地の土地の価格」✕「期待利回り」+「固定資産税+都市計画税」

○建物の場合
オフィス・倉庫・工場など用途によって異なりますが、基本的には土地と同じく
・賃貸事例比較法
・積算法
・収益分析法
が使われます。
倉庫や工場などは月額賃料=坪単価×契約面積という方法になります。

一物五価

不動産には、ひとつの物件に対して複数の価格が存在します。これを一物五価と呼び、売買価格や賃料を考える際の基準にもなります。下記に五価を紹介します。

○実勢価格
不動産市場で実際に取引された価格のことです。過去の取引平均値から算出されることもありますが、売手と買手の間での交渉や土地の周辺環境などによって変動するため明確な金額はありません。
不動産売買の価格交渉、財務評価・担保評価などを算定する際に使われます。

○公示地価
国土交通省の土地鑑定委員会が毎年1月1日時点の標準値1㎡あたりの価格を毎年3月に公表します。毎年ほぼ同じ標準値を選定し土地鑑定員会で価格を決めます。
土地取引の目安、税金の算出基準、銀行の担保評価などを算定する際に使われます。

○基準地価
各都道府県が国土利用計画方に基づき、毎年7月1日時点の土地を約2万ヵ所以上の1㎡あたりの価格を調査することを基準価格と言います。公示地価と似ていますが、都道府県が公表を行うこと、都市計画域外の土地も対象となるといった点が異なるため、公示地価より対象範囲が広くなっています。基準地価は公示地価の補完的な役割も補っています。
土地取引の指標、土地の評価・査定、地価の動向把握などを算定する際に使われます。

○相続税路線価
国税庁が毎年1月1日時点の道路に面した基準値1㎡あたりの価格を定めています。相続税や贈与税を計算する際に使用される指標です。公示価格の80%程度になるよう設定されています。
相続・贈与税の算出、財産分与の指標、土地売買の目安、担保評価などを算定する際に使われます。

○固定資産税評価額
各市町村が3年に1回、基準年度の前年1月1日時点の価格を公表しています。公示地価の70%程度が目安になります。
固定資産税、都市計画税、不動産取得税、登録免許税などを算定する際に使われます。

以上の五価を照らし合わせながら最終的には売手・買手で価格の合意を形成していくのです。

最後に

M&Aにおける不動産の取り扱いは単なる資産の移転にとどまりません。不動産は企業価値を構成する重要な要素であり、事業の継続性・資産評価・税務・契約関係・リスク管理など、あらゆる側面に影響を与えます。不動産をすべて譲るのか、一部は賃貸とするのかによって評価や税負担が大きく異なってきます。M&Aを進める際には、不動産の専門家と連携して最適なスキームを選択することが重要です。

M&Aでの不動産の取り扱いについてご質問などがございましたら、お気軽に<support@gift-map.jp>宛にご相談ください。

2026.6.12掲載

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